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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

「むかし後漢の呂布が愛していたという赤兎にも勝りましょうな。書写山とは、馬の名もよし、安土のお厩を出たものなら鞍縁起も上々吉。きっとよい出世いたしましょう」

と、心から嬉しそうであった。それを見て秀吉も、縁へ上がって、元の座にもどり、なお、眺め合って、

「働けよ、この上とも」

と、励ました。

官兵衛は更に一礼した。そしてやがて、庭垣の彼方へ向って、家臣の母里太兵衛の名を呼びたてた。何事かと、太兵衛が駆けて来ると、

「上月城の働きも、先頃、毛利の水軍を追い退けたときの功も、実に、そちの忠勤には目ざましいものがあった。これは今、筑前様から拝領した名馬だが、戦功へ下すったものゆえ、これはそちに譲ってつかわす。筑前様へ、よろしくお礼を申しあげたがよい」

と、あっさり与えてしまった。

母里太兵衛は、余りの過分に、歓びを越えて茫然としていたが、手綱を押しいただくと、ぼろぼろ泣いていた。

秀吉は心のうちで、官兵衛の器量をもう一応も二応も見直していた。

「この男、家臣のつかい方も、なかなか心得ておる。それだけに、使うにはちと難しいな」――と。

友の情け

一

三木城の嶮とその抵抗力は、歯肉に頑強な根を持っている齲歯にも似ている。