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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
風を示していた。
政職から名ざしで、
「官兵衛の意見は」
と問われても、
「つねに申し上げている以外、何も事あらためていう意見もございません」
としか答えなかった。
そして、にやにや笑って誰彼のことばを、黙って聞いている。また、ひょいと鋭い眼を向けて、唾をとばしていう者の顔を見つめる。
「これでは埒があかんでしょう」
明け方ごろ、主人の政職へ、就寝をすすめたが、老臣の蔵光正利が眼にかどたてて、
「まだご評議の一決も見ぬうちにお寝みあれとは何事だ。それでも其許は輔佐の任をなしていると思うておるのか」
と、手きびしく決めつけられ、官兵衛は素直に、はいといって俯向いてしまった。
そのうちにいつの間にか、姿が見えなくなったのである。もっとも交代で朝食へ退がってはまた席に回っていたので、彼もそれで立ったものと思われていたが、陽が高くなっても、午ちかくなっても、戻って来ないので、大いに彼の進退を疑う者が出て来たわけである。けれど政職だけは、さすがに若い彼を家老に抜擢したほどだけの知己である。ほかの家来が疑っているような事は毛頭考えてもいないふうだった。
「やあ、ご一同。