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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

が」

「いやいや、あの儀に就ては、何とも思ってはおられません。しかし私が気にかかるのは筑前様より御辺へ宛てて、兄弟同様に思うぞというご意中を書かれたお手紙の参っていることですが」

「左様。そういう勿体ない御意を書中に拝したことはあります。それが、どうしてお心に懸かるのであるか」

「今も、そのご書面は、お手許にありますかの」

「家宝にもせばやと存じて、常に携えておりますが」

「あらば、重治に、一見させて下さいませぬか」

「おやすいことである」

と、官兵衛はすぐ具足櫃から取出して示した。

すると半兵衛重治は、つらつら黙読していたが、読み終ると、黙って、炉の中へそれを燻べてしまった。

「……あ?」

官兵衛が愕きを洩らした時は、もう一片の白い灰となっている。さすがの彼も少し面を変えて難詰った。

「それがしに取っては、又なき君恩の品、唯一の家宝ともしておる物を、何で火中へ投じられたか。御辺にも似あわぬ不躾な所業。何かおふくみあっての事か」

すると半兵衛重治は、すこし膝を退げて、詫び入る体で静かに諭した。

「ご賢明なあなたのことゆえ、すぐお悟りがつこうと存じて、つい逸まったことをいたした。