轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
秀吉の立場になってみれば、そういう疑いを抱けない事もない。今の如き時代だ、また人心だ。ましてここ織田方の旗色は断然悪い。
――いい過ぎた。すぐ帰って来ますからなどということは、かえってその懸念を濃くさせるようなものであった。官兵衛はそう気づいたので、なお自分の誠意をいい足そうとして面を上げかけると、ふいに、
「行って来い」
秀吉は褥からずり出して、いきなり官兵衛の手をつかみとり、力をこめていった。
「辛いだろうが行って来てくれ。――其方にとっては、小寺政職はどこまでも主人だ。わし以上切れぬ仲の人でもある」
「では、おゆるし賜わりますか」
「お汝を措いて、誰がよくその任に当れよう。ただ筑前が案じていたのは、其方の生命だ。危険は充分にあるぞ」
「覚悟の前にござりまする」
「――それがいかん」
秀吉は汗をかいた手を離した。そして膝へ膝をつき進めて、
「小寺の家中が、危害を加えんとする惧れも充分ある上に、その方自身が、死を選ぶ惧れもわしは多分に抱くのじゃ。――ひとたび離反を口に出した者というものは、後難を案じるため、いかに説いても、容易に思い止まらぬものだ。――たとえその方の誠意を以てしても、御着一城の者が何としても固執して動かぬ場合は……官兵衛、お汝は何とする?」