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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

親たちが来て抱きすがって泣いているのを見かけ、いそいで菩提寺の住職を訪れて、われらどもの衷情を打明け、そのなきがらを乞いうけました。……手にかけて殺めたものではございません」

井口兵助も、ともに懸命を面にあらわしていった。

「ひそかにお窺いし奉るに、どうもそういうお考えらしい。しかしご仁慈の篤いお心より、求めるに求めがたく、お悩みのご様子にちがいないと、それがしどもの凡慮を以ても、お察しいたしておりましたので……かくは計ろうて参りました。何とぞ、これを以て、松千代さまのお命を、お救いおき下されますように。……われら両名、黒田家の臣にはござりますが、胆に銘じこのご恩は生涯忘れませぬ。われら如き者の一命にて、ご用に立つことのある日には、いつなん時なりとも、その為には差し出しまする。……お願いでござりまする」

小姓がそこへ燭を持って入って来た。

半兵衛はつと立って、

「両名、庭へ出ぬか」と、誘った。この頃、春もやや更けて、毎夜、庭の山桜には、水々しい月がのぼった。

その晩、白布につつまれた白木の小箱と、半兵衛の書簡とが、竹中家の一家臣にかかえられ早馬を以て、安土の佐久間信盛の許へさし送られた。