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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
ゆうべも聞いた、今朝がたも聞いた。あまりくどく仰せあると、織田のまわし者のように思われますぞ」
「一身の誹謗のごときは官兵衛すこしも意にかけません。また、たとえこの場で殺されようとも、日ごろの信念は決して変えもしませぬ。いかにも昨夜また今朝、一度ならず抱懐の一端は申しのべたが、それがしの申すたびに、あなた方が反対召さる。座中ごうごう、紛論をかもすのみで、何らの効もない。――そこで中座して息抜きをしたわけでござった。またこれへ臨むのに沐浴をいたして来たのは、みだりに口にすべきでない儀を、改めて、これを最後のそれがしの言として、申しあげようと存じたからである。就いては、聴かれる側の貴所方におかれても、そのように不要意なおすがたでは畏れ多かろう。――おつかれの上でもあろうが、まず座を直し、襟を正して、しずかにお聞きとりねがいたい」
そういう官兵衛自身はもちろん非難される点もないように正座していた。主人の小寺政職には、何かすぐ胸にひびいたものがあるらしく、そう聞くとすぐ褥をわきへ退けてこれも坐り改めた。
主君たる人のその体を見ては、たとえ一族老臣であろうと、我意を張っていられなかった。