轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
「おう。善助どの。太兵衛どのもいたか」
僧の衣笠久左衛門は、お菊のあとから入って来て、汚い旅包みやら笠などを、まず縁の端へさし置いた。そして力なく、友のあいだへ来て坐った。
「しばらく見えなかったが、どこか遠方へでも行かれたか。きょうもここで、消息を案じていたところじゃ」
母里太兵衛が、面をさし覗くと、久左衛門は、その顔を、いよいよ気懶げに振って答えた。
「――安土へじゃ。安土は何をしておるか。これしきの小城、もう大軍を催して、総攻撃にかかりそうなものと探りに行ったが、まだ近いうちには行われそうもない。……のみならず、悲しい土産ばなしを耳にしてしもうた」
「悲しい土産ばなしとは」
「松千代様のお身の上だ。こういったらもう分るだろう。頼みがたきは人の心。……よもやと心恃みにしていたが、菩提山の半兵衛重治め、ついに、安土の命を奉じ、松千代様をお首にしてさし出してしまったらしい。……おれは、急にあの痩せ法師の半兵衛にあいそが尽きた。あれは似而非君子だ。もののふの情も何も知らぬ糞軍師だ。……残念さ、おいたわしさ、何ともいいようがない」
初めは火のごとく罵り、後には水の咽ぶごとく、仮の法衣の袖口で、落涙する面をかくした。