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くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
籠城組も内応組も、女童には目をくれなかったし、むしろその避難を願っていたので、城中で恐い目にも会わなかったが、一歩、城門の方へ溢れ出ようとすると、
「もどれ、もどれっ」
と、重厚なよろい武者の部隊が、泣きさけぶ女たちを突きもどし、その中の部将らしい者が、
「女童の群れに伍して、女装して遁れ出ようとする卑怯者がおるやも知れぬ。いちいち検めてから城外へ出してやれ」
と、うしろから前面の兵へどなっていた。
もちろん寄手が迫って来たのである。織田方の何という大将の下の手勢か知れないが、ともあれ眼のとどく限りはその黒々とした甲冑の波と槍と旗さし物などであった。
「よしっ、出ろ。――よし、次も出てよい」
女たちは、首や黒髪を検められて一人一人城外へ突き出された。その間に、大手の門はひらかれ、武勇を競う将士は眼も外へとび出しそうな顔を向けて、怒濤のごとく駆け入って来る。
女たちは突きとばされ、踏みつぶされた。暴風雨に吹き寄せられた花のように、袖門の端にかたまりあった。生ける心地もなげにおののき合って、順々に身の検めをうけては城外へ出されていた。
その群れの中に、於菊はいたのである。