轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
「最前から、その松千代にちがいないが? ――とは見ているのだが――。はて、その松千代がいかにしてなお世にあるのか。松千代の首を斬れと、信長はたしかに命じたはずだった。あれは去年の暮であったと思うが」
「仰せの通りでありまする」
「そして、お汝は、予の命を奉じて、間もなく安土へ首を斬って出した。あれはどうしたことか」
「元より偽首でありました」
「なに。偽首であったと」
「はい。後のお咎めを覚悟のうえで、畏れながらわが君を欺き奉りました」
「ううむ……そうだったか」
唸きをもらして、信長はもういちど、松千代のすがたを見直しているのだった。半兵衛重治と信長との対照は、あたかも火と水のようである。――如何あらんと、事の成行きを、息つまらせて見ていた側臣たちの眼は、期せずして、信長の顔いろとその唇もとにあつめられていた。
信長の面には、人々が案じていたような怒色は出て来なかった。かえって、非常に安心したような落着きのなかに蔽いきれない歓びすらあふれていた。そしてこの人の眸にはかつて見られたことのない素直な自己への反省がありありと眼のうちに往来していた。
「……さようか。