轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くろだじょすい
黒田如水
吉川 英治
「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页
彼女の姿をしげしげとながめ直した。きのうまで、病を養っていた自分の部屋には、彼女の挿けた一枝の菊花が丹波焼の壺によく匂っていた。それをあとの部屋へ置き残して来るのさえ今朝は何となく儚い気がしたものを――と、彼はふと多感な血に満身を駆け荒された。
が、飽くまでさりげなく、
「そうか。それはまあ目出度い。して、嫁ぐさきは何家か」
「もと荒木の家中でしたが、このたびの戦いを機に、織田勢の麾下に加えられました伊丹兵庫頭の子息、伊丹亘という者へ、縁があって、嫁ぐことになりました」
義兄としていうにもいい辛そうな新七の容子だった。湯町の辻のような人目のある所でなかったら於菊は泣き仆れたかもしれなかった。義兄のうしろにかくれて、袂で顔を掩っていた。
「ふうむ。降参の将伊丹兵庫のせがれに嫁ぐとは、おかしな縁だの――いやたとえ降将であろうと織田殿に随身の上は官兵衛も一つ麾下の人。めでたく過せよ」
「ありがとうござりまする」
「於菊。ながい間、なお、城中のことも、官兵衛のいのちのあるうちは、忘れはおかぬ。嫁いだうえは良い妻になれよ」
於菊は、答え得なかった。なお新七の背の陰にいた。