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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

師とも仰ぎ、また、秀吉の片腕とも恃んでいたのに、はや先へ逝くか。つれないぞよ重治。……重治」

と、慟哭して、次の間には多くの近臣もいるのに、見得もなく惜しみ嘆いて止まなかった。

半兵衛は弟の竹中重門と小姓を呼んで、静かに身を起してもらい、秀吉に向って、謹しんで半生の恩顧を謝し、そして語気常のごとく、

「人の死は、梢のものが、地に帰するようなもので、逝く者は無情、残る者は有情といえ、これを春秋の大処から観れば、極めて平凡な自然のすがたでしかありません。わが殿ともあろうお方が、今更、未練なおん涙は、日頃の殿らしくもないことです。わけても今は信長公の大業もまだ中道にあり、あなた様のご前途には、並ならぬものがありましょう。愚痴に暮れているときではありません。……且つは、この重治が亡い後も、官兵衛孝高どのがおられます。孝高どのこそ、それがしに取っても、真に士は士を知るの知己でした。また、将来のお計りも、すべて、お嘱しあって、万まちがいないでしょう。……不肖の些か学び得てお役に立ちそうなことは、今日までに、ほとんど申しあげて、篤くご会得もあることと存じまする。