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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

従来の輿では、重きに失して、進退の敏速を欠く。また近来用いられ出した駕籠では、敵に出会って働きができない。そこで彼は、輿と駕籠を折衷した新様式の陣輿を案出した。

それの用材にはほとんど竹を用いた。重量を軽減するためである。上の覆屋根は除き、船形の座だけを深目にして、すっぽり坐りこむ。そして神輿のように高々とかつがせるのだ。担い棒は二本通し、前棒に二人、後棒に四人、都合六人して担がせた。これなら担う者も軽々と進退できるし、乗っている官兵衛も坐ったままで、長柄でも刀でも使い得る。いざとなれば、乱軍の中へ駆けこんでも、自由に敵と渡り合えるという点を主眼としたものだった。

「どうだな。太兵衛」

途中、その上に揺られながら、官兵衛はうしろに従えて来た母里や栗山を顧みていった。

「古今にわたって、こういう乗物を戦陣で用いた武将はあるかの。わしを以て嚆矢とするだろうな」

「左様ですな。恐らくございますまい。むかし天慶の乱に、将門の猛威に抗し難くなった軍勢が、彼の叔父にあたる者の木像を輿に乗せて陣頭にかつぎ出し、叔父に矢を射るかと将門を威嚇して追い崩したということは聞きましたが」