轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

長居はせぬ。一やすみ致して、夜に入ったらすぐ、わしは舟で立つつもりだ」

北向きの中庭に面した一間に坐って、顔の汗を拭うと、官兵衛はそういっていた。しかしすこしも遠慮や窮屈は知らないように、部屋いっぱい寛いで坐りながら、大きく扇子をうごかして、ふところへ涼をとっていた。

むかしの礼儀を忘れず、与次右衛門は、閾を隔てた次の小部屋にかしこまって、

「今夜、舟でお立ちとおっしゃいますか」

「そうだ、陸路は到底安心して歩けないからな。舟がいいのだ。……ところで、摂津まで渡る小舟を一艘、そちの才覚で雇ってくれないか」

「おやすいことでございますが、いったいこのたびは、どちらまでお越しなされますか」

「岐阜だ、行く先は――」

「岐阜へ」

「さればよ。おおかた察しがつくであろう」

「……と、すると、あの織田信長様のいらせられる?」

「まず、用向きは、その辺と思え。……信長と名を聞くだに、すぐ異様な眼をかがやかすこの中国だ。御着の家老たるわしがそこへ行ったなどと知れたら、たちまち鼎の沸くような騒ぎになる。故に、あくまで密かに参らねばならぬ。船頭とても、極く確かな者か、さもなくば、阿呆のような男をさがしてもらいたいが」