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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

湯あがりの爽涼な肌に、衣服も更えて、客の官兵衛は甦ったように、遠慮なく日ごろよりよく飲み、またよく語った。

秀吉も酒を愛し、竹中半兵衛もすこし嗜む。加うるに、官兵衛との三人鼎座であったが、量においては、官兵衛が断然主人側のふたりを凌いでいる。

夏の夜はみじかい。殊に、巡り合ったような男児と男児とが、心を割って、理想を談じ、現実を直視し、このときに生れ合わせた歓びを語りあいなどすれば、夜を徹しても興は尽きまい。

「――かさねて申しあぐるが、仰せらるる将来の大計、いわゆる天下の事は何とせられても、中国を治めて後、初めて成るものではございますまいか。強大な毛利家の勢力が、頑として、摂津以西の海陸を擁しているあいだは、たとえ信長卿が中原の地、京都に旗幟を立てて、足利公方以下、旧幕府の人間と悪弊とを地から掃くように追払っても、なお肯んぜぬ近畿の大小名を一個一個討って行っても、また東海方面の安定を得ても、甲山陸の強豪を亡ぼし尽しても、結局、それを以て、満足とはいえません。思し召すところの理想なども行えません。どうしても中国平定の如何に帰結されます。……ましてその毛利家が石山本願寺と結び、その本願寺派の抗戦が、種々な形をとって、近畿に伊勢に北陸に、宗門の身のあるところ、隙さえあれば、火の手をあげて、反信長の兵乱を起し