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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
父親の見世の、子飼いの手代の癖に、当の主人を死地におとしいれた、長崎屋三郎兵衛はどうだ?
雪之丞が、孤軒老師の訓えのままに投げた、恐ろしい暗示によって動いた、長い間、悪謀をともにして来た、言わば親友の広海屋の詐略のために、ふたたび起つあたわぬ打撃をうけてしまった。
して、長崎屋は、あの豺狼に似た根性を以て、当然、ごく最近、今度はあべこべに広海屋に噛みつくであろう。
――現世の栄華を、いのちよりも、魂よりも貴く思う人達から、まず、一ばん大切なものを奪い取って、零落の淵に沈ませ、恥辱をあたえ、さんざんに苦しみ悩ませてから、必殺の刃で、一思いに一命を絶ってやってこそほんとうの復讐なのだ。一どきに殺してしまうには、あの人達の罪業は、あまりに深い――
そう思っている雪之丞、師走興行に、忠臣蔵が、出るということを聴いて、これも天の配剤なのだろうと考えた。
――赤穂の義士方も、あれだけの辛抱があればこそ、残すなく望みを遂げた。わしも、構えて、あわてまいぞ。
あわてたなら、一人二人を仆すことが出来ても、五人の敵を、剰さず亡ぼすことは不可能であろう。
そんな覚悟で、もう、あと三日で、千秋楽という舞台を踏んで、楽屋に戻ると、「田圃」