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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
一九
「して、むすめは、どこに隠れていたのじゃな? やはり、雪之丞にかくまわれて――」
「とんだお間違いでごぜえます。雪之丞は浪路さまから、何度呼び出しをうけても、義理をお屋敷へ立て抜いて、お言葉にしたがわなかった容子で――」
「では、むすめは、いのちを賭けて恋いした、雪之丞に、逢わずに死んだというわけか――」
と、さすが、わが子のあわれさに、暗然として、三斎がつぶやいた。
「ですが、そこには、神もほとけも、ねえわけじゃあござんせん――浪路さまは、あっしの小家で、御臨終になるときに、雪之丞に、手を把られているような、夢を見ていたようでごぜえますよ」
闇太郎は、こう言いつくろって、
「何でも、未来はかならず一緒とか、言っておいでのようでした」
「で、その最期の際は、わしのことは、この父親のことは、何も申してはいなかったか?」
隠居は、だんだんに流れて来る涙を、どうすることも出来ずにたずねた。
「それを訊かれるのが、一ち、あっしにゃあつれえんで――」
と、闇太郎は、わざとらしくもなく、目を反らして、
「何でも、父御、兄御の方々にはうらみのひとつもおっしゃりたいようでしたが、そこは、おたしなみで、何の御遺言もござんせんでしたよ」