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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
譬えば、こちらさんのような御大家から、ものの百両とものして出て、いい気持になっているとき、そんな貧乏人の嘆きが耳にへえりゃあ、百両の中から、一両ぐれえは、分けてやるのが、誰しもの人情でしょう」
「わしにも、貴様の気持は、いくらか解るようだ。是非に欲しいと思い込んだら、手に入れぬ中は、目蓋も合わぬというような気持は誰にもある」
三斎隠居は、自分の考えているだけのことを、どんな人間の前でも、ずばずばいってのける、この不敵な盗賊と対坐している間に、ついぞ覚えない、胸の開きをさえ、感じて来るのだった。
青年の頃から、彼自身の心に、喰い込んでしまった、不思議な欲望――骨董癖、風雅癖が昂じた結果の、異常な蒐集慾、それを満たすために、どれ程、うしろ暗い、汚らわしい行為を、繰り返して来ていた彼であったろう!
その衷情を、三斎はいま、不図言葉に漏らしてしまったのだ。
闇太郎は、きょときょとした目で、相手を見た。
「へえ、御隠居さんも、それじゃあ、ぬすっと根性が、おあんなさるんですか!」
平馬は聞きかねたように咳払いをして、
「これ、無遠慮も、いい加減にいたせ」
「かまうな――」