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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

雪之丞は、今は、ますます心をひかれて行く。この新しい友達の考え方が、羨ましくてならぬのだった。

――江戸の生れの方は、何とキビキビ思った方へ、突き進んで行くことが、できるのだろう、それに較べて、このわしは、小さな望みを果すために、二十年を傾けてきて、まだ、何にもしていはしない。

闇太郎は、対手の、そうした心の中を、見てとったかのように、云うのだった。

「俺は、お前が胸の中を割ってみせて呉れねえと云って、先程も云う通り、少しも恨みに思いはしねえ。だが、一度思い立ったら、ぐんぐんとその方角へ、とびついて行く外は、仕方がないだろうと思うのさ。ためらっていても、どうせ、老少不定のこの世なんだ。今この一時が、人間には、一番大切だとしか思われねえんだ。お前は、ただの役者として、日本一になりたけりゃあ、そのつもりでおやんなせえ。それとも、何か他に、望みがあるなら、何もかまうもんか。明日の無え命と思って、やんなせえ。へんな気焔を上げるようだが、この俺も、お前のためには、どんな時、どんな場合でも、命をかけて、後見をするつもりだよ。それにしても、お前は今夜三斎隠居の屋敷へなんぞ、何だって、出掛けたのか。