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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
、堪えしのぶことは出来ないような気がされるのだった。
そこで彼女は、その晩以来、病気届けをして、公方のお成りをさえきっぱりとことわった。
すぐに典薬が、何人か閨房に派出されたが、彼等は、ただ、小首をかたむけるばかりだ。勿論、彼等とても一代の名医たち、中には浪路の病が、秘密な気苦労から出たものであろう位なことは、診て取ったものもあったのであろうものの、うっかりした事のいい切れぬ人達のこととて、当らずさわらず――
「これは大方、心気のもつれと存じます。しばらく、心静かに御静養なされましたなら――」
「申すまでもなく、このお城内にて、何の御不自由、御不満足もござらぬはずでござりますが、出来ませば、温泉、海辺にてなり御養生なされましたなら、日ならず御快癒に相違ござりますまいが――」
なぞと、老女にいいのこして退いてしまったのだった。
これこそ、彼女が、どんなに期待した診立てであったろう!
「わたくしも、せめてこの一月なり自宅に戻って楽々としていたら、このような病い、じきに癒ろうと思いますが――」
と、中老たちに対して、相当の権威を持っている、取締りの老女にささやくと、寵愛ならびない浪路のいい分に背いて得はないと知る彼女、すぐに、