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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
九
そしてすぐに吉原へゆくゆえ、乗物の、支度支度」
九
雪之丞も、つねづねならば、仲の町のお供なぞは、平に辞退するのであるが、今宵は、自分の差し金で、広海屋が、上方米を廻漕し、やがて、長崎屋と一戦を、開始することにもなろうと言うことを、ハッキリと聴いたので、一種、異様な満足を覚え、なおもとくと、この大商人の有頂天なありさまを見聞し、やがて打って変った大打撃をあたえた場合、喜悲両様の表情を思い比べて見たいというような、意地の悪い好奇心にさそわれ、ともども北廓への乗ものをつらねたのであった。
花こそなけれ、菊こそすぎたれ、不夜城のにぎわしさ! 明るさ! 引手茶屋に着くと、いつか、先乗りが触れ込んでいたと見えて、芸者、太鼓持が、かごを下りる姿を見かけて、ずらりと顔を揃えて迎える。
「よう、お大尽の御来駕!」
「名古屋山三さまの御着到!」
錆ごえを、ふりしぼるのもあれば、金切ごえを振り上げる女もあり、すぐに、かつぎ上げるようにして、一行を、二階に押し上げる。
百目蝋燭を、ともしつらねた灯光が、金屏風に、度強く照り映えるのも、この土地なれば、浅間しからずふさわしく見える。