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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
と、徳利をつかんだまま、よろよろと、立ちあがると、ガタピシと破れ襖をあけ立てして、庫裡の戸棚の中の、揚げ蓋を刎ね上げる。
揚げ蓋の下が、窖への、下り口になっているので、カビ臭い、しめっぽい匂いがムウと来る。
中は、真暗なのだが、慣れたわが庵のこと、爪先さぐりで、危なっかしい縄梯子を下りてゆくと、平らな板じきになる。
板じきのつき当りが、木ぶすま――法印、その木ぶすまの、釘錠を引抜くと、いくらかためらったが、思い切って、ガラリと開けて中をのぞき込んだ。
其処は、六畳はしかれるだけの広さを持った窖だ。たったひとつ、ぼんやり点いている、油灯火の光りで見ると荒木の床に、畳が三畳並べてあって、その上に唐草の蒲団を、柏にしてごろりと横になっている。それが、軽業お初の、囚われのすがただ。
不貞くされているのか、熟睡しているのか、寝すがたは、法印が、はいって行った気配にも身じろぎもせぬ。
「おい、お初つぁん」
法印は、灯心を掻き立てて声をかけた。
パッと明るくなると、木枕をして、向うをむいているお初の、襟あしが、馬鹿に白く匂う。
「おい、お初つぁん」
寝すがたが、少し動いて、無愛想な声で、