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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

なたの言葉を聴いて、耳が洗い度い――とにかく、わたしも用の多い身、折角の招きながら、あしらえが気に入らぬゆえ、この場を立ち去りますぞ。門倉どのにも、いずれ又――」

ツと、立ち上ろうとしたとき、ふところ手をしていた、お初の右手の肘が少しばかり動いて、はだけられた襟のあわいから、キラリと、黒く光るものがのぞいた。

冷たげな、小さい、丸い一ツ目――

――銃口だ!

さすがに、雪之丞が、ハッとしたとき、お初は、赤勝ち友禅の長襦袢の腕がからむ、白い袖を、ふところから襟にくぐらせて、はばかりもなくずいと突き出した。

その手の中に、軽くつかまれた、ドス黒い武器――

「わかりましたか? これはついこのごろ、紅毛から渡って来た元込め銃――一発、ドンと射つと、それっきり、又込めなければ、つづけて射てぬ、あの古ッくさい、不自由な鉄砲とはちがうのだよ。曳金を曳きさえすれば、つづけ射ちに打てるのです。それに、これでも、このお初は、軽業小屋にいたおかげで、狙った的ははずさないのさ! 御府内の銃ばらいは、御禁制だが、ここは川向う、しかも小梅のはずれ、おとがめもあるまいから、どれ、ひとつ、久しぶりで、腕だめしを見せましょうか――そうさねえ、雪さん、ついお前さんのうしろの、何の木だか、細い幹、あの木の地上から五尺ばかりに見えている、枝を払っ