轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

一九

だが、その夢の中でさえ、もはや、ただ美しい、ただ優しい、ほんのりとした幻は漂うては来ぬ。それは、遠い遠い、少年の日に、置き忘れてしまった。情なや、六欲煩悩の囚人である身は、やはり、現も少しも変らず、恐ろしい。激しい不安や恐怖の餌じきにならずにはいられぬのだ。

彼は、見た――こんな夢を。

おのが放け火の、すさまじい炎の渦に、押し捲かれそうになって、逃げに逃げて、やっと辿りついた崖の上、目の下は、鰐も棲みそうな血潮の流れで、それが、フツフツと沸きたぎっているから、追う火先きをのがれるために、それに飛び込むこともならぬ。

が、どうにも、背すじが焦げつきそうになる、苦しまぎれ、ざぶんと躍り込んだ、熱い流れ――ぬらぬらと、五体にぬめりつき、目口にはいろうとする血潮を、やっと吹きのけて、対岸に上ると、足の裏を、突き刺すばかり尖った、小石原――その小石原の果てに、こちらに、背を見せて、小さな子供――それが、その尖った小石を、杉なりに積み上げては、揺りくずされ、積み上げては、揺り崩され、それでも何か、消え消えに、うたっては、積み重ねている。

歌うを聴けば、儚なげに――