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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
こちらは、五助、どんより曇って、月もない、杜下径、茅萱のなびいた、蔭につれ込むと、小声になって、
「甚太郎――話と申すはな――」
正直な男、
「は、何でござりまするで――」
と、前屈みに、身を寄せた瞬間!
――シュッ!
と、いうような、かすかな音がしたのは、抜き討ちの一刀が、鞘ばしった響き――
――ピュウッ!
と、刃風が立って、ズーンと、この無辜の庶民の、肩さきから、大袈裟に、斬り裂いた。
「うーむ!」
と、いうような、定かならぬうめきが、聴えたようであったが、闇を掴むかの如く、犠牲者の両手が、伸びて、痙き攣ッて、やがて、全身を突っ張ったまま、ドタリと斜めうしろに仆れた。
血を浴びぬように、五助が、切ッ先の加減をして、突き仆したのだ。
「あーッ!」
浪路は、物蔭の、異様な気配に、ハッとして、つぎの刹那、思い当って、思わず叫んだ。そして、逃げようとして、膝がしらの力が失われて、よろよろと、その場に跪いてしまいそうになったとき、血刀を、提げたままの五助が、駈け寄って、左手で、抱き止めるようにした。
「おはなしなされて、お、は、なし――」
と、叫ぼうとするのを、