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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
六
は、は、は」
笑いにまぎらして、闇太郎が、
「鬼の目に、涙ッて奴なんだろうな」
六
二人は顔を見合せるのを怖れるように見えた。
「まあ、仕方がねえや――不運だなあ、あの女一人に限ったことじゃあねえんだ――だがなあ、雪さん」
と、闇太郎は、思い込んだような調子で、
「お前のからだがあいたあとで、たった一度でも、ゆっくり逢ってやってはくれるだろうなあ――それだけは、約束して置いてもれえてえのだが――」
「おたがいに、いのちがありましたなら――」
と、雪之丞は、かすかに言った。
彼の魂としても、感じ易く、わななき易い――そして、これまで、押え押えて来て、一ぺんも、激しく攪き立てられたことがないにもせよ、青春の、熱い血しおは、心臓に漲っているのだ。
――あのお人は、境涯のためにどんなに汚されているにしても、わるい方ではなかった。わたしを思ってくれるこころに、まじり気はなかった。
雪之丞の、胸も淋しい。
闇太郎は、急に、語調を、ガラリと変えた。
「は、は、は、とんだ幕が、一幕はさまってしまった。それじゃあ、又、あいましょうぜ。もう、風は、得手だ。潮は、一ぺえに充ちている――思い切って、帆をあげて、突っぱしりなせえよ。