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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
二四
「ヒ、ヒ、ヒ、ヒ」
と、黒い影が、笑って、
「わかりませぬか! 信じられませぬか! 与平どの――この顔をじーッとごらんなされ、おみつめなされ――牢屋から出されて、裏屋ずまい、狂うてくらしましたゆえ、さぞおもかげもちがったであろうが、これが、だれか、そなたにわからぬはずがない――のう、ようく、この顔を、御覧なされや!」
「あッ! ゆるして下され、松浦屋どの、清左衛門どの! わしがわるかった。が、わしばかり、わるかったではない。第一に、悪謀をすすめたのは、これなる三郎兵衛――」
「又しても、わしをいうか! 広海屋!」
と、長崎屋は、火災後、この一室に監禁されて、骨ばかりになった両手をのばして、広海屋につかみかかる。
「あたりまえじゃ。貴さまゆえ、このわしの迷惑――気違い、失せろ!」
と、広海屋も、いつもの落ちつきも、狡猾さも失って、歯がみをして、相手の咽喉にしがみつく。
二人は、お互の首を絞め合ったまま、ごろごろと、床を転げて、苦しげなうめきをあげつづける。
「おおッ!」
「うわあッ!」
「う、う、う、う!」
「む、む、む、む」
それをこころよげに見おろしている、黒い影――