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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

二七

闇太郎の目が鋭く、あたりを見まわして、さて、向う側に跳ね下りると、つづいて、雪之丞が、ひらりと飛ぶ。

振りかえると、土蔵の屋根に、暁によろこぶには、早い、夜がらす、黒い影が二羽――

「早い奴だの! 黒い鳥め!」

闇太郎はつぶやいて、肩を並べるように、河岸を歩いて、さしかかる屋敷はずれ、曲ろうとしたその刹那だった。

真黒な、野獣のようなのが、

――タッ!

と、飛びついて来たと思うと、闇太郎の真向めがけて、

「えい!」

と、斬りかかる、すごい白刃。

「プッ!」

と、口をすぼめて、かわした闇太郎、かがみ腰に、ふところへ右手を、

「妙なものが出て来たぜ」

「一ツ、二ツ、三ツ、五ツ、七ツ――沢山影が見えますが、怖うございますこと」

ちっとも怖くない風で、そう答えた雪之丞、ぐっと、裾をかかげたとき、どこかに身をひそめていたか、うしろから、

「とう!」

と、肩先へ来る。

スッと、わずかかわした雪之丞の雪白の手が、右に動いたと思うと、

――ズーン!

と、地ひびきを打って、前に飛ぶ人つぶて。

雪之丞、闇太郎、二人の背中がぴったりと合せられて、八方から、いつでも来いの構えになる。