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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

六

「おッ、あれは!」

まごうかたなき、闇太郎住居とおぼしき小家を、星ぞらの下、提灯の火が幾つかちらばるように囲んで、黒い人影が、右往左往している。

雪之丞の胸は、早鐘を打ッた。

「あれは、たしかに捕方! さては闇さんを捕りに向うたか――」

と、口に出して、叫んだが、

「あのように、改心した――もはや盗みはする気がないと、あれまで決心した今日の日になって!」

雪之丞、ぐっと、唇を噛むと、小褄をかかげて、息をととのえて、闇の中を、ひた走りに駈け出した。

捕方勢に、気づかれぬ間に、近づいて、耳をすますと、捕頭が、部下を環にあつめて、

「さて、いよいよかかるぞ! 江戸ではじめての、神出鬼没といわれた闇太郎、かく、隠れ家をたしかめ、たしかに潜みおるを知った上は、捕りにがしたら、お上の御威光に傷がつく――よいか、しっかりやれ! どじを踏むと、八丁堀の息のかかる、御朱引内で、十手は持たせねえぞ! いいか!」

「わかりやした」

と、目明しの親分らしいのが、うなずく。

「それ!」

と、同心が、振った十手、バラバラと、捕手たちが、小家をかこんで、表にまわったのが、トントンと、雨戸をたたいて、