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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

ましたが、実は、わたくしも、今日の舞台をのぞきますと、何が、けれん芸、立派な舞台で、あれでは、ちっと、当地の役者も、顔まけをいたすかも知れませぬ。それで早速、手配をしまして、三日目の見物は、土地をすぐって押し出すことにいたしました。そこへ、とのさま方が、あの雪之丞を、柳ばしにお招きくださって、言わば、この土地のものにも、おひき合せ下さろうと言うのは、われわれども、芸人仲間としても、うれしいことでございます」

なぞと、これは、男同士から、心からよろこぶように言うのだった。

芸者たちも、雪之丞と一座が出来るというので、何となく浮き立って、

「そんなにいい役者なら、もう上方へ帰してはやり度くないねえ」

「ほんとうに、芸も、位も、江戸が一ばんですのに――みなさんで可愛がって上げたら、屹度こっちに居着いてしまうでしょうよ」

三斎隠居が、ニヤニヤしながら、

「と申して、あまりその方たちが愛しすぎると、折角の、彼の芸がどんなことになるかも知れぬぞ」

「ふ、ふ、素手で蠅を追うようになるより、いっそ、一日も早う、西へ帰してやるが、雪之丞のためになろうも知れぬ」

と、浜川が、尾についてざれ口を叩く。