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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

「何でも、お城のお嬢さまが、おからだがいけないとかで、当分お屋敷の方へお戻りになるというのだ」

「えッ、何だって! 浪路さまが、お戻りになるッて――」

長崎屋の顔に、ありありと驚愕のいろが漲った。

その浪路が、大奥にいればこそ、その手一すじをたよりに、城内に深刻な発展を試みようと努力しているのではないか――その手つきを失ったら――

「まさか、ずっとお城をおさがりになるわけではあるまいな!」

「それはそうであろうとも――」

と、広海屋はうなずいて、

「わたしも、実は、それが懸念で、さぐりを入れて見ると、こないだの芝居見物以来、何とないブラブラ病い、それで、御本人が、のびのびと、おうちで保養をしたら、すぐによくなろうと、いい出されたとかでな。だから、大したこともなく、すぐに快うなられて、大奥にお帰りになるに相違あるまい――また、上つ方でも、浪路さまを、お手ばなしになるはずはなしさ」

「なある――読めた!」

と、長崎屋、ずるい笑いに、目顔をゆがめるようにして、手を打った。

「浪路さまの、御病気の原因は、結局、この座敷にいるのじゃよ」

「うむ。わたしもな――」

と、広海屋が、これも意味ありげな微笑を雪之丞の方へ送るようにして、