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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

「そなたから、こないだの事を聴いていたので、大方そんなことではあるまいかと思うているのだ」

「いやもう、てっきり、それにきまっている」

と、長崎屋が、あからさまに、雪之丞を見て、

「太夫、そなた、お嬢さまが、帰り保養ときまったら、すぐにお見舞にゆかねばなりませぬぞ――御病気のもとは、そなたにきまっていることゆえ――」

「何とおっしゃります!」

と、雪之丞、さも仰山に驚いて見せるのだった。

「御贔屓にあずかりました身、それはもう御病気とうけたまわれば、すぐにお見舞に伺うはずでござりますが――わたくしが御病気のもととは? 一たいどういうわけでござりましょうか!」

長崎屋は、笑いつづけて、

「何も不思議がることはない、御息女は、恋の病いにかかられたのじゃ。のう、広海屋さん――」

「いかにもそれに違いない。わたしもそう思いますよ。太夫」

と、広海屋主人も、大きく合点合点をして見せて、真顔になって、

「何にしても、すばらしいこと、そなたのためにも運開きじゃ」

五

「そりゃもう、このお人に取っては、これ以上の運開きはないが――」

と、長崎屋も、相槌を打って、

「この際、うんと本気に腰を入れてもらわぬことには、われわれの方のもくろみも、うまくゆかぬことになろうも知れぬで――」