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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
と、相手が、小首をかしげて見せるのを、さえぎるように、
「あたしゃあね、こんなお多福だから、吉原のおいらん衆のように、お客からしぼることも出来ねえし――」
と、ややするどく、皮肉にいって、
「と、いって、まさか茣蓙をかかえて、柳原をうろつきもしねえのさ、ただね、手先きが器用なものだから、おのずと、この節お金が吸いついてならないというわけですよ、ほらね――」
と、ふところから、緋いふくさ包を取り出して、小判や、小粒をザラザラと膝にこぼして見せて、
「今夜だって、こんなに持っているわ」
「じゃあ、てめえ、掏摸を――」
と、声をとっぱらかした長二郎が、やっと、低めて、
「掏摸をはたらいているんだな?」
「びっくりなさることはねえよ――」
と、お初は、紅い唇で、むしろ、あどけ無く笑って見せて、
「おめえの縄張りを荒しているわけでもなしさ。鬼の女房に何とかいうから、あたしもいくらか働かなけりゃあ、釣合いが取れ無いと悪いからね――」
さすが、長二郎ほどの男も、このときほどびっくりした目がおをしたことはなかった。
「あたしもこれで、思い込むと、何をやらかすかわからない娘さ」