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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

そこは、それ、魚ごころあれば、水ごころと言うことがある」

白く、匂わしい顔を、振りあおぐようにして、頬を、雪之丞の横がおに、擦りつけるようにするのだ。

梅花のあぶらが、なつかしく香るのが、雪之丞には却って胸苦しい。

「と、言って、それはあんまりな押しつけわざ――そなたも、見れば、江戸切っての女伊達とも思われるのに――」

「いいえ、あたしゃあ、そんなにえらい女ではありませんよ。きらわれものの女白浪、それもお前というお人を一度見てからは、意馬心猿とやらが浅間しく乗り移った、さかりのついた雌犬同然さ――それで、悪いかえ? 悪いといったって、今更、どうにもあとへは引けないんだから――」

お初は、ぐっぐっと、雪之丞にしがみつくようにして喋舌るのだ。

雪之丞は、からだ中に、沸かし立てた、汚物をでも、べとべととなすりつけられるような、いいがたい悪寒に、息もつけない。

――何というおそろしい執着だろう! この女は、わしの見かけに寄らぬ腕は、十分知っているだろうに――いのちを賭けて横恋慕をしているのじゃ――さて、どうしたら?

「ここまで来れば、二つに一つさ」

と、お初は、炎のような息を吐いて、