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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

「あたしの心を受けてくれるか――それともあたしを敵にまわすか――」

「もし、わたしが、そなたを突きのけたら――」

「さっきからいっているように、鐘の中に逃げ込んでも、蛇体になって巻きついて、お前のからだを熔かしてやるよ――あたしは、お前が、どんな人達を、敵としてつけ狙っているか、ちゃあんと知っているのだからね。上方のおんなに、どんなにしッこしが無いか知れないが、江戸のおんなは、思い立てば屹度やるのさ」

雪之丞、淫らな雌狼にでもつけまわされているような怖れと、煩わしさとに、一生懸命おさえていた、殺気が、ジーンと衝き上って来た。

「これ、どうあっても、そなたはわたしを邪魔する気か!」

つかんでいた二の腕を、ぐっとねじり上げようとすると、お初はパッとすりぬけて、

「おや、人を殺す気かえ!」

一二

「ホ、ホ、大方、こんなこともと思っていたんだ」

お初は、雪之丞から、パッと飛び退くと、右手を帯の間に突ッ込んでいた。

「だが、太夫、お前は兎角うで立てが好きらしいが、そんな生れぞくないに、手込めにされるようじゃあ、このお江戸で、人前でハッキリいえない商売は出来ないんだよ――ちゃんちゃらおかしいや! 人の生き口を閉ごうなんて――」