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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

――何て、こったい! ああ意気地なく出られちゃあおいらにゃあ、口が利けやあしねえよ。女って奴あ。おれには苦手だ。

だが、彼は、雪之丞に誓った手前、どうしても、お初の口をふさがねばならぬのだ。

――太夫も、もう少し不男に生れて来りゃあよかったに――知らずに罪をつくっているというものだ。が、このままにはすまされねえ――お初には、未来までうらまれるだろうが、あいつを何とかして、世間と縁を切らせて置くほかはねえかなあ、当分の間でも――

闇太郎は、妙に陰気な気持になったが、

――なあに、大の虫、小の虫だ――お初、気の毒だが、おらあ、敵になるぜ。

どう、魂胆したか、闇太郎、その夜はそのまま、浅草田圃の仕事場にもどって行くのだった。

二五

闇太郎は、浮かなかった。翌日一日、隠れ家で、細工場の机に坐っても、仕事に気が乗らず彫刀を取り上げてはすぐに投げ捨てたり、腕組をしては生あくびをしたりしつづけていた。

たそがれが来て、彼は鬱陶しそうにつぶやいた。

――ほんとうに、厄介なこッたなあ――おらは全く厭だ。お初なんて女の子とかかり合うのはやり切れねえ――が、あいつは気違いだ。