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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
ていること、こんなときこそ、――一肌ぬがねばすむまいが、――そんな風に申されたので、のッぴきならず、大損を見こしての回漕――いや、もう、長崎屋さん、お互のことだが、他国者はつろうござんすな」
ひどく、気軽に、しかも、不平たらだらのように、広海屋はいって、吸いつけた莨を、輪に吹いた。
長崎屋は、腕組をして、そのはなしを、じっと聴いて、上目づかいに相手をじろりと見て、
「なるほど、それで、おはなしの筋は呑みこめました。では、町奉行所にお願いを立て、貧民への施米、破格の廉売というのも、まことのことでござりますな?」
「さ、それも、こちらから申し出したわけではなく、お役向からの、ねんごろな談合、わしとて、爪に火もともしたい商人、すすんでのことではありませぬが、この際、おえらい方々に憎まれては、広海屋の見世の立つ瀬がないと思われたでな――はい」
広海屋は、恬然として、いって、
「実は、そなたにも、おめにかかって、施米、廉売の、片棒をかついで貰いたいと思っていたところじゃ」
長崎屋は、下唇を、ぐっと噛み締めるようにして、目を伏せて聴いていた。
一一
「広海屋さん、おぬし、まだ、物忘れをなさるお年とも、思われませぬがな――」