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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
ているわけゆえ、結局、どこまで煩いがからまってゆくか、見当もつかぬ――それで、さすがの御隠居も、あらわにはお出しにならぬ、大分、御心配の御容子だが――」
「でも、妙でござんすねえ――」
と、お初が、いぶかしげに、
「雪之丞のために、姿をおかくしになったとしたら、あの者を責め問うたなら、お行方は、すぐにおわかりになるでござりましょうに――」
「ところが、それが、あの化性もの奴の不敵なところだ」
と、門倉平馬は三白眼の白目を、剥きだすようにして、
「あれは、悉く御隠居の御信用を得ている上、実にきっぱりと、申しわけをいたしておる――いかにも、浪路さまより、身に余る仰せをうけたこともござりますが、当方は、河原者、人まじわりもつつしまねばならぬ身、ことさら芸道大切に、これまでとて、女性の肌にもふれておりませぬで、その御懇情だけは、平にお忘れ下さるよう、申し上げたことでござります。その上、御息女さまの、御他行さきより、お招きをうけたこともござりましたが、来月興行の稽古等にていそがわしく、おことわりいたしました。して、その後はふっと、おたよりもいただきませぬ――と、憎いことに表面は申しわけが立ったのだ。