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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
なぜなら、拙者はじめ、あらゆる手を伸ばして雪之丞の、挙動を探って見たが、いかにも、彼めの申す通り、隠れ忍んで、御息女に逢うている容子もない。実証がつかめぬ――御隠居は何しろ、日頃から、雪之丞御贔屓――あの者は、どこまでも芸道専一のもの――いかにも、浪路のたわけた言葉を、突きはなしたに相違あるまい。浪路にすれば、雪之丞に想いを寄せる位であれば、日頃より大奥のくらしが、呪わしゅうなっておったのでもあろう――まず、手をつくして、隠れ家を探す外はない――と、こう申されるだけだ。たった一個所、以前の乳母が怪しいで、これも嚇しもし、すかしもしたが、どこまでも存ぜぬ知らぬで、その口ぶりにも怪しいふしもなく、今は、全然、捜索の方途も失っている始末――」
「土部さまと申せば、老中さまより、御権威があるようにまで、いわれているお方、そうしたお方にも、御心配というものはあるものでございましょうかね――」
と、お初は、いって、しかし、信ぜられぬというように首を振って、
「でも、雪之丞が、お行方を知らないなぞというのは、あたくしには、のみこめませんけれど――」
一七
「変ですことねえ――雪之丞が、浪路さまとかのお行方を、すこしも知らない? あたくしには、どうものみこめない――」