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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
お初は、横顔を見せながら投げやりに笑い出した。
「ホ、ホ、ホ、あたしだって、木ぶつ金ぶつじゃあござんせんし、たまには、なまごころも出て来ますゆえ――」
「御亭主をなくされて、気楽に日を送っているからだなら、まあ、拙者とつき合ってまいってもよかろうな――」
ポンポンと、手を鳴らして、門弟を呼ぶのを、
「だって、お家の方々が、これから長居をしては、何とお思いになりますやら――」
「酒じゃよ――早う」
と、平馬は、膝を突いた弟子に言って、
「なにが、構うことが――家内でもあれば兎に角――もっとも、そなたほどの女子を一目見た男は、あった家内も、じきに去りとうなるかも知れぬが――」
――ふん、またしても、いや味ッたらしい――
――でも、こんな奴こそ、馬鹿と鋏は何とやらで、また便利なときもあるかも知れないから、まあ、ちょっと、釣っておいてやろうか――
お初は、そう思案をきめて、
「じゃあ、折角のことですから、お相手させていただきましょうかしら?」
「うむ、そういたしてくれ、かたじけない――お願い申すよ、何せこの荒くれた世帯、たまには自家の中にも、花が咲いてくれなければ――」