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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
「そんな空世辞よりも、先生、あなただって、雪之丞を、あのままにして置いていいのですか――あんな寒い田圃中で、ぶちたおされてさ」
平馬は、お初を、白い目で見て、その目を反らして、
「いや、断じて、あのままには免し置けん――とは、思っているが――」
「じゃあ、やっぱし先生も、あんな女の腐ったような男が、そんなに怖ろしくッてならないのですか?」
お初は、嘲けりを露骨に出す。
「何を馬鹿な! あの時は油断があったればこそ――」
「それなら、なぜ、手を出さないんです、よう、先生」
二一
お初は、皮肉に、鼻声を出して、物ねだりをするように繰り返した。
「わたしが、殺されかけたあの男、あなたが、いかに油断とは言え、あんな恥辱を取ったあの男を、いつまで、あのまま放って置くのですよう、先生」
飲めば青くなる方の平馬は、お初の言葉に、目を釣るようにして、
「拙者だとて、あやつを、あのままに放って置く気はない。いずれ、手痛い目を見せてやる所存でいたが、そなたが、そう言うなら今晩、これからでも、乗り込んで、素ッ首を叩き斬ってやる」
と、肩をいからせると、お初が嘲笑って、
「それだから、厭さ。