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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

と、お杉は、明るくした灯で、お初をみつめた。

お初は、お杉の紅勝ちの友ぜん模様の寝床の枕元にあった、朱羅宇のきせるを取り上げて、うまそうに、一服して、長火鉢のふちで、ポンと叩いて、いくらか苦笑した。

「そうかい? じゃあ、留守にしたので、方々へ御迷惑をかけたわけだね――なあに、そんな筋じゃあなかったのさ――と、言って決して、無事というわけでもなかったのさ。おいらにも似合わねえドジをふんでね、少しばかり馬鹿を見た。へえ、闇の奴、心あたりがねえと言ったッてかい? まあ見ておいで――あの野郎だって、その中、只は置かねえから――」

と、二ふく目を、やけに、煙を吹いた。

「まあ、そんなら闇の親分と、何か仕事のことで出入りでもあったの?」

と、お杉は、茶筒から喜撰を、急須に移しながら。

お初はうなずくでもなく、

「いいえね、あの野郎を、使った奴があるのさ――あの野郎をあやつッて、人をとんだ苦しい目にあわせた奴が――」

「まあ、あれ程の人をあやつるとなると、誰だろう? 大物に相違ないが――」

「思いもかけない奴さ――おまはんには、見当もつかないだろうよ」

「仕事のことで?」