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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
彼女は、血まみれの守り刀を、投げ捨てたかったけれど、指が、柄に食いついてしまってはなれない。
それを、指を一本一本折るようにして、やっと放して、藪の中に、投げ込んだが、突然、おそわれるような気持になって、バラバラと駆け出した。
いつか灯が消え、戸も閉った居酒屋の前を駆け抜けるころ、彼女の息ざしは、絶え絶えに喘いでいた。
一四
横山五助の、最後のうめきが、まだ耳に残っている浪路、気も上擦って、闇の小径を、それぞ音羽の通りと思われる方角を指して、ひた駆けに駆けつづけたが、息ははずむ、動悸は高ぶる、脚のすじは、痙き攣ッて、今はもう、一あしも進めなくなるのを、やッとのことで、町家の並んだ、夜更けの巷路まで出ると、
――ウ、ウ、ウ、ワン、ワン!
と、突然、吠えついた犬――
人こそ殺したれ、かよわい女気の、小犬が怖さに、また、やぶけそうな心臓を、袂で押えて急いだが、小犬はどこまでもと、吠え慕って、やがて、それが、二匹になり、三匹になる。いずれも、寝しずまった、小家の軒下に眠っていたのが、仲間の小犬が――
――血くさいぞ! 怪しい奴だぞ!
と、わめくので、目をさまして、