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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

「何をいっておるのやら、わしには、よくわからぬが――」

と、モゾリと、法印がいう。

「まあ、莨でも上って――ソラ、お茶もはいりました」

婆さん、皺びた両手で、茶と、煙管をすすめて、じっと、みつめて、

「おまえさん、とぼけたり、はぐらかしたり、しッこなしにしておくれよ」

「別に、はぐらかしも、とぼけもしやあしねえ――」

法印、煙草はことわって、ガブリと茶を呑んで、

「何を考えているのだね? 婆さんは?」

「ひ、ひ、ひ、ひ」

と、例の笑いを、笑った老婆、

「いかにおまえさんが、御法体の、上人さまでも、こんな宝を、折角手に入れて、そのままになさるはずがないと思うのですがね――お前さんだって、島抜けの何のとまで綽名を持った、お人じゃものな――ひ、ひ、ひ、ひ」

「ふうむ、この女子のことを、いっていなさるのかな?」

と、法印、浪路に目を送る。

「そうともさ、あの女子のことさ――」

と、婆さんは、酒くさい息を吐いて、

「あれほどの宝を、見す見す、手もふれず置く法もあるまいがね」

「なあに、わしは、あの女子から、家ところを訊きただして、連れ戻ってやるつもりなだけよ」

と、法印が手短に答える。