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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
「何ですって! 坊さん! あの女を、連れ戻してしまうんですって?」
婆さんは、噛みつくように、
「へえ、そりゃあ、おまはんの気持も読めないわけではないさ。見たところ、豪家の一人むすめッて風俗さ――連れて行ってやりゃあ、まあ、包み金にはありつくだろうが、それでこのあたしはどうなるんですえ?」
濁った目を見すえて、
「このお三は、どうなるんですよう?」
「いや、わしは、礼物を、あてにしているわけではない――ゆきがかりゆえ、面倒見てやろうと思うばかり――」
二三
お三婆は、どうしても、法印の本心がわからぬというように、
「ねえ、島抜けの――まさか、おまはん、本気で、うちへ連れてもどすの何のといっているのではあるまいね――若し、そんな後生気を出したのなら、大馬鹿ものだ」
「どうしてな?」
「どうしてといって、おまはんは、自分が、ソレ、天下のお訊ね者ではないか――娘がいなくなった、どこへ行った、大変だ――と、わめき立てているところへ、この女を連れて、のっそりと、あらわれて見なさいよ。町内の岡ッ引き、目明し、待っていた――で、お礼を頂戴するどころか、お縄を頂戴してしまいますよ。