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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

「よし来た」

法印は、一刻も早く、こんな場所は立ち去ってしまいたいのだ。大ごとになって、身許がばれては彼として、それッ切りだ。

荷を下ろそうとすると、

「こりゃこりゃ、左様な品、お玄関へ!」

と、さむらいが、さえぎったが、闇太郎、突きのけて、

「これ! この品へ、指でも差すと、この屋敷の家来として、腹を切らねばならぬぞ!」

「何を、申すにことをかいて――これ、持ち帰れ!」

さわぎは激しいので、詰所から二、三人、どやどやと、家来どもが出て来る。その中で、年輩のが、

「青井うじ――何じゃ、かしましい――御隠居さま、お引きこもり中に――」

「こやつが、こんな荷をかつぎ込みまして、どうしても、御隠居に拝謁をと、いいはりますので――」

じっと、見て老臣が――

「ふうむ、こりゃ、この荷は、何であるな?」

闇太郎、急に、小腰をかがめて、

「へ、へ、へ」

と、笑って、

「あなたは、話がおわかりになるようでごぜえますね――ちょいとお耳を拝借――」

「ふうむ」

老臣が、闇太郎の目つき、顔つきに、何ものかを認めたか、式台に下りて来る。

「お耳を」

そして、低く、

「御当家で、鐘、太鼓で、お探しになっているかけげえのねえものが、ござんしょう?」