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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 页

青空文庫

「毛利家の圧迫、四隣の策謀、まったく孤立無援のかたちに在るようでして」

「当初からの覚悟であろうが」

「もとよりです。――が、織田軍の西下を以て、一挙に大勢を決すべく、画策していたものが、毛利家より機先を制され、かえって、播州を固めさせ、敵に防御のいとまを与えたことは、何としても残念であると、書状を以て、またまた、申して参りました」

「軍勢の催促か」

「その中で、よく頑張っているのには、感服いたします。この二月頃に一度、五月下旬にも再度毛利家の水軍が、姫路を衝いて、一挙に、腹中の異端を、取除こうと試みましたが、両度まで黒田父子の善戦で、首尾よく撃退しておりまする。これは先にもご報告申しあげて、わが君からも、ご感状を下された通りですが」

「今はいよいよ支えきれぬというて来たのか」

「負け惜しみのつよいあの男のことですから、左様には申しませんが、一刻もはやく中国へ軍勢のご派遣なくば、遂に、毛利の威圧と策謀の下に、播州一円は、不落の態勢を成してしまうでありましょうと……」

「はははは……」と信長は笑い出して、

「悲鳴をあげて来たな、彼も遂に」

「いや、無理もありません」