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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
一二
どうかすると、長二郎の――今自来也と呼ばれた大泥棒のかせぎより、お初の方が、ぐっと良いこともあった。
「お初」
と、ある晩、逢ったとき、出逢茶屋の二階の灯の下で、長二郎は、いいかけた。
「お初、おめえ、大それたことをやらかしているんじゃああるめえな?」
ジロリと、鋭い、まなこだ。
「大それたことって?」
十九むすめのお初は、赤い布をかけた髷を揺するようにして、ほほえんだ。
「あたし、大それたことなんざあ、なんにもしやあしないさ」
「が、ふところが、いつも不思議だぜ」
と、長二郎が、首を振るようにして、
「無間の鐘や、梅が枝の手水鉢じゃああるめえし、そんなにおめえの力で――」
一二
今自来也の長二郎から、
――無間の鐘をついたわけでもあるまいし、いつも、あんまりふところが豊かすぎる――何か、大それたことをしているのではないか――
と、そう問い詰められた、軽業のお初は、苦にもせずに笑ってしまった。
「あたしが、どうしてこのごろ、お金持だっていうんですか? そりゃあ、働くからですよ。無心ばっかりして、おまえに愛想をつかされてはかなしいと思うものだから――」
「女のおめえが、働くといって?」