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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
一五
「いかに申しても、お取り次ぎ、出来ぬと申すに! 帰れ!」
一五
「へえ、不思議なことをおっしゃるものだね?」
と、闇太郎、玄関ざむらいに、
「折角、御隠居さまの御病気に、かならずきき目のあるものを、持って来たというあッしを、かたくなに木戸をつくたあ、こいつあ変妙だ。いやしくも、家来眷属というものは、旦那の身に、すこしでもためになることと聴きゃあ、百里をとおしとしねえのが作法――それを、どこまでも、突っ張るなんて――」
「何と申そうと、姓名、町ところも名乗らぬ奴、お取りつぎは出来ぬぞ! 帰れ! 帰らぬか!」
玄関の若ざむらいは、いつぞや門倉平馬とともども、たずねて来た人間と、知る由もないので、ますます怪しんで引ッぱなす。
「おさむらいさん、お前さんも、融通の利かねえお人だね――こうして、表から、是非とも、お目にかかりたいと、へえッて来るからには、まとまった用事があるものにきまっている。見ねえ、この男がしょッているこの大きな箱――御注文の品なのだよ、御隠居さん御注文の――おい、法印」
と、島抜けを、闇太郎は見返って、
「その、この家に取っちゃあ、大事な品を、玄関へ置いて、てめえは帰ってしまえ!」