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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页

青空文庫

三

「はい、実は、このわたくし、浜川、横山おふた方をはじめ、広海屋どの、長崎屋どのにも、昔より深いえにしがある身でござります。それゆえ、あの方々のお身の上は、いつも、何から何まで響いてまいりますので――」

「ふうむ」

と、三斎はうなった。

「最初から、そなたの身には、いぶかしいことが、まつわっているようわしには思われていた。そのたけたすがたに似もやらぬ、武芸のたしなみといい、何とはなしに感じられる、身のまわりの妖気――浪路が、一目見て、いのちもと思い込んだにも、奇しさがある――さては、切支丹ばてれんの術をも学んだものか!」

雪之丞の紅唇が、冷たくほころびた。

「わたくしは、天下の御法を守るということでは、自分でもたぐいないものと存じます。とうに手を下して恨みを晴らすべき人々をさえ、刃にもかけず、じっとながめているわたくし、何で、切支丹の御禁制なぞ破りましょうや!」

「ナニ、奇怪な言葉のはしばし――手を下して恨みを晴らすべきものをも、討たずに忍んでいると言うのか? そなたは敵持ちか? これ、雪之丞」

と、三斎隠居は、相手の冷殺とした鬼気に打たれたようにしてみつめていたが、