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ゆきのじょうへんげ
雪之丞変化
三上 於菟吉
「朝日新聞」1934(昭和9)年11月~1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 页
四
「う、うむ」
と、三斎隠居は、だんだん青ざめながらうなりつづけるのだった。
「う、うむ――わしの目に狂いのあることはない――わしの目が、どんな珠玉、錦繍の、まがい、本物を間違えたことはない――たしかに、見覚えのある顔だ――目だ――唇だ――すがただ」
「ほ、ほ、ほ、そんなにお見つめあそばして、お恥かしゅうござります」
と、雪之丞は、紅い口に銀扇を押しあてて笑ったが、
「一たい、どこのどなたさまに、わたくしが、お似申しているのでござりましょう?」
「それが、思い出せぬ――いまいましいほど、どこかにこだわりがあって、思い出せぬ」
と、三斎隠居は、物に憑かれたように、みつめつづけるのだった。
「では、わたくしが、ほんの心あたりを申し上げて見ましょうか――」
雪之丞は、いよいよ冷たく笑って、
「わたくしの方も、思いだせるようで思いだせませぬが、この身もおさないころ、長崎に生い立ったこともござりますゆえ――」
「えッ! そちが、太夫が、長崎で!」
と、三斎、叫んだと同時に、顔いろが、青葉のように化った。
「はい、長崎で、育ったものでござりますが、これ、土部の御隠居――」
雪之丞は、そう凄然たるこえで呼びかけると、深くうつむいて、しばし荒い息をしたが、サッと、振り上げた顔――